ウッドショック

今回はウッドショックを取り上げます。一部ヒアリングとあとは林野庁の資料を中心にした記事・データのとりまとめですが、業界理解の一つの情報としてご視聴いただければと思います。

構成としては、世界と国内の需給状況と、業界動向をお伝えして最後見解をまとめています。

当然、木材の業界紙もウッドショックの記事がオンパレードで動向を業界全体が注視している状況です。 日経新聞も木材高騰について取り上げています(2021年4月22日)。

<早速、木材高騰の背景

・米国の住宅・リノベ・DIY需要の急増により、北米木材価格が高騰

・中国も経済が急回復し、住宅需要増

・さらにコンテナに関する要因を指摘する声も多いです 

コンテナに関しては、

・巣ごもり消費でコンテナが出払った

・荷動きが激減したため、コンテナ売却を進めていた、人手不足も深刻

・国境間移動制限や14日間の隔離の影響で納品遅れ

など複数指摘されています。

世界的に見てどうなのか、北米が主要因なのですが、各国で木材をとりまく環境に混乱が見られます。

<北米>

2019年大型ストライキで減産、2020年以降は自宅の改築・改修増加、低金利ローンで住宅着工数も増加し、木材価格高騰

<ロシア>

今後、森林育成のために輸出制限本格化の可能性

<中国>

アメリカ貿易摩擦、関税上昇、代替品として南米から輸入増

<欧州>

堅調な建築市場、DIY需要の増加、木材の米国輸出も増加(原木供給は豊富)

<東南アジア>

合板等の生産停滞、国境間移動制限により、労働力不足、悪天候により原木供給不足

<オセアニア>

虫害の影響など木材の伐採と輸出を一次停止、再開後、中国への輸出増加

こちらはアメリカの都市部の人口減少と住宅市場が活況を呈しているという記事です。

「ニューヨーク州の人口が、20197月から20207月の間に126000人減った。全米50州の中で一番大きな減少」

(2020年12月25日ヤフーニュース)

「(米国の)住宅市場の活況を後押ししているのが、過去最低水準のローン金利だ。リーマン危機時以来、約11年ぶりの高水準で推移している。」※NEWSPICKS2020年8月3日

ここからは日本国内に目を向けていきます。木材自給率は30%台で推移しており、約6割輸入に頼っていた状況で今回のウッドショック問題が発生しました。

過去5年の輸入ボリュームは、2020年から減少傾向になっており、ある輸入住宅の担当者にたずねたところ、1年2年にわたり仕入れ交渉を重ねていたと聞きました。

・輸入住宅S社担当者コメント

「1年ほど前から交渉を重ねていたが、今回世界水準価格を受け入れ、新規契約分からお客様に対して、+100万円ほど提示する方向で社内協議中」「2×4材は販売価格が高いアメリカ市場へ納入。品質にうるさくない中国市場へも輸出。日本は価格面、品質面で折り合いつかず、輸出国としての優先順位が低下」(2021年4月25日)

<丸太輸入量(2016-2020年)>

2020年の丸太輸入量は、前年比▲24%減

・ 米国(シェア:69%)は、同+4%増の158万㎥ 。カナダ産丸太輸入量 の大幅減により、米国産丸太に代替需要が発生。

NZ(同12%)は、同▲20%減の28万㎥ 。第四半期の経済活動の 再開後、中国向け輸出にシフト。5月と10月は輸入量ゼロ。

・カナダ(同12%)は、同▲68%減の27万㎥。カナダの最大手丸太輸 出業者が、経営戦略の観点から、一時的に自社有林の伐採を停止したため激減。5月と9月は輸入量ゼロ。

<製材輸入量(2016-2020年>

2020年の製材輸入量は、前年比▲13%減の493万㎥

EU(シェア:47%) は、同▲8%減の234万㎥ 。フィンランドにおける製材工場のストライキにより、第四半期に供給の遅れが発生。経済活動の再開後、堅調な建築市場とDIY需要の増加により、欧州域内の需 要は回復。北米への輸出も増加

・カナダ(24)は、同▲20%減の118万㎥。北米域内での需要増加 と製材価格の高騰が影響。2×4住宅の着工戸数も、同▲15%減(新設住宅着工戸数計は同▲10%減)。

・ロシア (同16%) は、同▲11%減の81万㎥。

国別の丸太の輸入量を確認すると、カナダ産がマイナス68%と激減している様子がうかがえます。製材輸入量もやはりカナダ産が減少しています。

直近1年を見ても、2020年の夏以降、集成材の輸入量がさらに激減しています。

次に価格です。シカゴ木材に関するデータですが2020年4月から高騰しています。2021年4月の価格は約5倍に高騰しています。

一方、国産材の価格は3ケ月4ケ月おくれて、2020年7月から上昇しています。国内木材業者のデータは、直近3ケ月もさらに上がっており、1.6倍になっている状況です。

住宅業界の動きとしては、

・価格上昇、工期遅延の説明書を施主様に提出したり、

2×4工法から在来工法へシフトしたりする動きが見られます。

・その他、パワービルダーが輸入木材から代替品として国産材の活用

 を表明しています。(施工品質の維持が課題です)

・樹種の複数選択と耐震強度の両立がテーマです。

・大手集成材メーカーが6月、さらに値上げ予定と表明している状況

まとめますと、

・もともと高騰傾向だったところに、コロナという間接的な要因が重なった

・グローバル化の懸念点(外国依存の弊害、コスト重視の弊害)を見直す機会である

・無垢材だったら含水率の問題もありますし、樹種の選択肢を広げるなら耐震強度の問題もあり、売るより造ることに真摯な地域工務店さんが信頼できる存在だと感じます。

そして、比較的、影響を受けにくいリフォーム・リノベーション、実家のリノベ、中古を買ってリノベも健闘する方が増えてリフォーム・リノベーション業界にとっては追い風になると考えています。そして、国内林業や地産地消について意識が高まるきっかけになればと思います。

6月末に木材不足が解消するという声もありますが、なかなか予測が難しいというの現状です。もしこれから着工するという方であれば、スケジュールの遅延とか打診があるかもしれませんが、ぜひ今回お伝えした内容、業界事情が背景にあり、なにとぞご理解いただきたいと思います。

<関連動画はこちら>

【ウッドショック】懸念点、リノベ業界への影響(ヒアリング、林野庁データなど解説) – YouTube

この記事を書いた人

コダリノ