今回は「製造から販売までを統合して行う新たな総合木材事業体」というテーマで現時点での動きとともにお伝えしたいと思います。
MECインダストリーは、三菱地所株式会社が主導し、7社の出資のもと、木材を活用する社会の実現を目的として、建築用木材の生産から 流通、施工、販売といった、垂直に流通経路を統合するビジネスモデルを構築する新会社です。
生産ラインで鹿児島県・宮崎県・熊本県の国産材を使用することにより、木材需要の拡大と、日本の緊急課題である森林の循環・林業の活性化にも寄与することを目指しています。出資する7社とはこちらのようになります。木材に関して様々な強みを持つ会社が賛同しています。ゼネコンの他、九州の有力商社、有力製材会社も含まれています。製材の段階まで押さえた事業体でその前段階の流通は気になるところですが、地元有力木材市場と提携したという動きもあり、調達先は確保できている状況です。
公開されている記事によりますと、既存の流通経路に対して、統合により構築される流通形態では、中間マージンをカットしたり、市場に卸してから売却先を探すプッシュ型ではなく、山林に欲しい木材を伝えるプル型になる点、多品種少量ロットではなく、各社のノウハウを結集し、ラインナップを集中、コストダウンが可能になる点が、ポイントです。各社の販売ルートがフル活用されることも見込まれています。
MEC Industryが注力するCLTについてもふれておきます。CLTは1995年頃からオーストリアを中心に発展、現在では、ヨーロッパ各国、カナダやアメリカ等で様々な建築物に利用される構造材で、コンクリートなみの強度をもちながら、断熱性能はRCの約13倍、軽量性はRCの1/5と言われています。製材がたがい違いに組み合わさっている構造になっています。
今後の見通しとしては、鹿児島の9万㎡に及ぶ自社生産拠点となる木材加工施設での、2021年部分稼働、2022年4月本格操業を予定しています。木材不足が叫ばれる業界ではありますが、 2021年5月現在、木材調達は計画水準をクリアし予定通り進んでいるという情報です。
ポイントとしては、
・「サスティナビリティ」「SDGs」という概念は、経済生命線である人やモノの流通遮断のようなリスク発生により、今後益々、重要視されていくという点
・さらに、今回のように、国産材の活用を基軸とする事業体では、上記プラス「地域活性」「地方創生」という社会的意義も大きい点
・こうした見方は、企業の戦略を見通す上で欠かせない視点となるという点です。
ある大手木材会社の役員の方との情報交換の場でも、外国産材の輸入に依存せず、いかに持続的な国産材の需要をつくるか強い問題意識を持たれていましたが、MECインダストリーは課題解決の取り組みの大きな一歩として注目されています。
第二第三の製造拠点も期待されており、引き続き、動向を見守ります。
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