ノジマのコンサルティングセールス

 今回は「目的購入ではなく、迷っているシニア客への対応」という設定でコンサルティングセールスの必要性について、ノジマの接客例も用いながら述べたいと思います。

<家電業界の購入パターン(イメージ)>

・20代~40代=ネット購入

・50代~60代前半=家電量販へ来店(今回の設定)

・60代後半~=ジャパネットたかたの中心顧客(60代70代で約50%)

 上記のように、ネットで自ら情報収集し、商品を絞り、オンラインで購入するパターンがある一方で、いろいろ目移りして決めかねているリアル来店客に対する接客にはコンサルティングセールスが求まれます。アクティブシニアと言われる層が中心です。

 私自身(50代)が洗濯機と冷蔵庫の購入を検討中で、今回、情報収集目的で、自宅近くのノジマへ立ち寄りました。カンブリア宮殿にも登場し、ご存知の方も多いかもしれませんが、立ち寄った際のやり取りの一部分を紹介します。

<洗濯機の例>

・質問の一例

「家族や子どもの人数」「乾燥機能を使うかどうか」「汚れた衣類が多いかどうか」等

・各社の特徴の一例

 「日立のナイアガラ洗浄は水の力により、汚れ落ちが強いと言われている、いきなり水を満タンにするのではなく、洗剤の洗浄能力を引き出す(高濃度の洗剤液)、水を徐々に貯めていくので水道代が多いわけではないです。パナソニックは泡の力で洗浄、洗顔の時に泡立たせて使うイメージ、衣類に優しい洗い方です。パナソニックに近いのが東芝で、ウルトラファインバブル、ナノ級の細かい泡なので、洗剤をつけて、一年後の白さが違うというのが特徴です」等々。

 各メーカーの強みを端的に伝えて、出し入れのしやすさの体感も促し、どこを重視するかお客様の反応を見ながら、納期情報、サイズ確認というステップを押さえて推奨商品を絞っていく流れが秀逸でした。決して一方的ではなく、ニーズを探りながら、目の前の来店客にとって最適な商品は何か探っていく寄り添い感が印象深いです。各メーカーのヘルパーでなく自社スタッフが接客するという体制や商品情報(価格、納期など)の電子化も前提で、その上で『お客様の使用後の満足まで見据えて、一人ひとりのお客様に合った商品を提案する』というカスタマーファーストという方針が浸透し、接客スタッフの自己啓発により接客力向上につながっているという「全員経営」も背景にあるようです(個人の売上目標なし)。

 その後、冷蔵庫も同様に短い言葉で比較ポイントを説明。結局、迷いが解消されて、洗濯機と冷蔵庫、合わせて総額40万円程度の購入に至りました。

 こうした画一的になりがちなマニュアルとはまた違う、コンシェルジュにも通じる接客力、ナビゲート力はスタッフによって差が出やすいですが、特にシニア客に多く見られる、情報の非対称性がベースにあり、情報量が「お店側>顧客側」の場合は上記のようなティーチングをベースにした営業は依然として大切な要素です。

 上記は家電店の例ですが、一定のシニア客を対象にするリフォーム・リノベーションの業界に応用できる視点です。安いから購入したのではなく、接客を通じて構築された信頼関係により購入しているので、当然、高確率でリピートにもつながるでしょう。

 コンサルティングセールスは何十年も前からある概念ですが、ぜひこの機会に自社のスタッフが自分の都合で提案していないか、自社の商品を一方的に当てはめようとしていないか、理念の浸透やリアル店舗の存在意義と合わせて振り返るきっかけにしていただければ幸いです。

この記事を書いた人

コダリノ