戸建リノベーション、性能向上リノベーション事業を展開する上で「中古+リノベ」か「既存宅のリノベ」かターゲット設定に迷っているという方は多いようです。
市場の成長性やエリア特性、自社の経営資源に適合するか等見極める視点は複数ありますが、それぞれにモデル企業があり、今回は一例ですが事例ベースに見てきたいと思います。
名前は伏せますが今回事例として取り上げる「中古+リノベ」に強いA社と「既存宅のリノベ」を得意とするE社は、大商圏という共通点がある一方、2社の相違点は多々あり、興味深いです。
まずA社の特徴として、
・デザイン重視(注文住宅を本業とする工務店系に対抗する手段としての豊富なデザイン訴求)
・粗利率は直近3年間、22~24%程度と聞いており「安いから中古リノベ」という客層にマッチしやすい価格設定(「競合し価格勝負になったら勝てない」という声もあり)
・リノベ一次取得者への対応が得意(銀行との提携などオリジナルローンやライフプランの提案)
・以前から中古住宅に対するインスペクションで信頼関係を築き、中長期化する顧客のランクアップ営業が浸透
・SEOが強い(常に「地域名+リノベーション」で上位3位以内)
等が主な特徴です。その他には、物件コストの地域差もありそうです。
一方、E社は、
・不動産志向より、建築志向が強い(注文住宅で蓄積した建築リテラシー、基礎への対応力等)
・理念共感型経営で、商品、スタッフに高い次元で浸透(エシカルビルダー)
・木の家リノベ、自然素材重視(注文住宅のメイン客層がIQ、所得など客層が一定以上で地域材や自然素材のブランディングが武器)
・「安いからリノベ」ではなく「家を残したい」という思いへの寄り添い(シニア層及び実家リノベの子世帯)
・商圏内の不動産価格が高騰しており、中古購入すると、リノベーション予算にまわす額が限られる傾向(中価格帯リノベでは自社の強みを活かしづらい)
・SEOはそれほど強くなく、チラシ中心に事業を軌道に乗せた=シニア客中心(近年はYouTube、インスタ重視)
等々、E社は性能追求しながらも理念をベースにした哲学やスペックを押さえながらの情緒的な要素を強く感じます。
上記のような違いがあり、「中古+リノベ」と「既存宅+リノベ」、それぞれの自社の経営資源の適合において、違いがあるという見立てです。
<まとめ>
・市場の成長性、期待感だけで取り組む事業を判断してはいけない
・会社の経営資源と親和性のある事業をすべき
・いずれも、性能を押さえた上で自社ならではの差別化要素があり、整合性のある全体設計を構築し、競争優位を築いている
以上、両社とも先導的なモデル事例であり、引き続き、動向を見守りたいと思います。