リノベーションへの業態転換とその判断基準

 今回は日本ではまだ例が限られる新築工務店からリノベーション会社への業態転換について下記に記載します。

 まず業界内の動向ですが、ポータルサイトや工務店YouTuberさんに対して、さらに「建て替えかリノベーションか迷っている」という相談が増えているようです。ウッドショックによる新築の値上がりが顕著なのと、リノベーションが認知されてきていることが要因だと考えています。

 日本では2025年に向けた新築の省エネ義務化の優先順位が一段下がったようですが、ドイツでは2000年頃に国の方針が既存住宅へシフトしました。その後、住宅業界の雇用人口は約6割になったと言われていますが住宅全体の市場が大きく変化した中で、リフォーム・リノベーションの専門会社へ業態転換し、活路を見出した例も多く存在します。

 一方、日本ではとにかく新築を追求するという方針でパワービルダーも攻勢をかけていますし、性能面を訴求した新たな規格住宅も出てきており、ドイツのような産官が連携しストック住宅の活性化を加速させるような動きはまだ弱いのが現状です。市場縮小が確実視される中、国の動きを待つのではなく、各社の経営判断が問われている状況です。

※全業界のうち、業態転換の予定ありが20.3%、予定なし72.2%(帝国データバンク、11479社集計/2021年1月発表)

 工務店経営はできるだけ同じ業態、同じ業態で事業展開していくことが基本ですが、外部環境がこれまでの延長戦上では成果を出しにくくなった場合は、業態転換する必要も出てきます。ただし、市場の変化(規模、成長性)、競合状況、自社の経営資源の適合という視点で、判断し、業態転換を図るべきです。

<業態転換のポイント>

・トレンドではなく大きな潮流を見る

・自社(新築事業)の強みを活かせるかどうか

・ビジネスモデルを支える軸となる人材が存在する

・会社のDNAとの融合

・強みや差別化要素は独りよがりではなく、市場、顧客視点で付加価値となるものか

・強みや差別化要素は他社にとって模倣しづらいか

・販促コストの最適配分(投資すべき要素はどこか見極める)

・新業態の顧客接点すべてにおいて、クオリティを高めること、一貫性を持たせること

・全体設計において、新築事業と同じ要素、同じでない要素を見極める

<業態転換事例(山陰エリアY社)>

 今後の市場の変化を見据えて、新築工務店からリノベーション専門会社へ業態転換した例があり、概要は以下の通りです。

・転換前(2017年当時)

 新築工務店(社員4名)、知人・紹介中心で年商2億円

・転換後(2021年12月現在)

 リノベーション専門会社(社員13名)、ほぼ2000万円級の新規顧客で年商5億円

 当初、案件が発生しても、営業面で課題があり、契約まで時間がかかった時期もありましたが、現在では直近3年でリノベーション案件を70件成約できるまでに成長されています。

 私は立ち上げ前の準備段階からお付き合いさせていただいていますが、小さな工務店ならではの敏捷性と、最適な全体設計を描き、強力なトップダウンにより集客起点、コンテンツと発信、営業フロー等各要素をやり切ったことで、早期に軌道に乗せることができたとつくづく感じます。

 業態転換という動きは、これから3年5年で増えてくるのではないかと見ています。

この記事を書いた人

コダリノ