経営学者 ジェイ・B・バーニー氏は「企業戦略論」を通じて競争優位の構築と持続性の観点で4つの条件を提示し、それを満たしていれば持続的な競争優位性を保つことができると提言しています。
<4つの条件>
・経済価値(Value)に対する問い→会社が持つ経営資源はその会社を取りまく外部環境における機会や脅威に適応することができるかどうか
・希少性(Rarity)→その経営資源、技術を保有していたり、活用したりしている会社は少ないかどうか
・模倣困難性(inimitability)→保有していない企業が獲得、強化する際に、コスト上で不利になるかどうか(模倣が難しいかどうか)
・組織(Organization)→その資源を有効に活用する方向性や仕組みが整っているか
私は2000年初頭、業界不信が蔓延し集客苦戦するリフォーム業界において、イベント販促を研究し、集客の最大化を図ったことがありました。警戒心を強めたリフォーム検討客の来店するという志向や安心感という志向に適応していたため、導入した当時のクライアントがほぼ例外なく記録的な来場数、見積依頼数を獲得できました。一方で、他の(社外の)コンサルタントがすぐに集客と運営を模倣し、またたく間に全国各地に広まりました。中には言葉巧みに近づいてきたコンサルタントが私の支援先に訪問し、取り組みの一部始終をヒアリングし、帰っていったこともありました。この結果、類似事例が急増し、同質化が進みましたが、ここで言えることは、私が当時、提案していたことは模倣しやすく、仕組みとしても浅いものだったということに他なりません。多少の単価アップはあったものの、私自身がリフォーム市場の幅広い領域の中で全体設計を見据えて専門店化させる意識が弱かったことも一因でしょう。
さて、現状の自社の戸建・性能向上リノベーション事業はどうでしょう。
・経済価値→自社には難解なリノベーション現場に対して的確な診断と設計に基づき施工できる知識、体制がある(新築で蓄積した建築リテラシーをリノベで活かすことができ、性能面で遜色ない規格住宅に勝る差別化要素がある等)
・希少性→自社の強みは商圏内の競合企業が持ち合わせていない、コアの部分で強みがあったとしても、それを活かすノウハウを持ち合わせていない
・模倣困難性→そもそも、集客基点をはじめ、各要素を整備することにおいて、ハードルが高い(参入障壁が高い)事業
・組織→自社の強みを活かし、事業化するための組織を構築している(仮に一部社員が建築リテラシーを保有していても、初回面談し、診断、設計、積算、クロージング、施工、施工管理、完工という一連の流れにおいて複雑にからみ合うため、施工業者を含めた組織面で、ハードルが高く、競合が限られる)
既に取り組んでいる会社にとっては、持続的な競争優位性を保つためにさらに精度を高めていくヒントに、これから取り組む場合は自社が参入した際に競争優位性を維持できるかどうか考察する視点として、参考にしていただければと思います。