生存戦略から成長戦略へ(近隣市場の持ち家リノベーションはリスクが少なく再現性が高い)

 

はじめに

 会社の未来を見据えた時に「どのように考えて、何から始めてよいのかわからない」という声が多いようです。今回は成長戦略を整理する上で、「アンゾフの事業活動マトリクス」をヒントに、市場(顧客)と製品(技術やサービス)、既存と新規を組み合わせて、事業成長、事業拡大の方向性を考えていきたいと思います。

 企業の成長には事業規模の拡大が不可欠です。既存の市場縮小が見込まれているなら業績の維持が困難となり、なおさらです。しかし、思いつきで戦略を広げていくのはリスクが大きすぎます。そこで、既存事業で既に持っている経営資源があるかないかにも目を向けて、相乗効果を活かした成長を考えようというのが事業活動の成長マトリクスです。

図表の解説 

 図表に示したように、一番リスクが低いのが既存市場における既存事業のシェアを拡大することです。アナログ販促にデジタル販促を付加し、新規案件の増大に注力するという会社は多いです。ところが、住宅業界では新築の競合状況が激しく、新築市場の縮小も確実視されています。既に、2021年の年間住宅着工は前年比109.4%と拡大したのですが、2022年2月(単月)は1963年依頼の低水準となっています。値上がりに値上がりを重ねて、様子見客が増えているのが現状です。

 次に既存市場に新たな価格帯の商品を開発し、投入するかたちです。注文住宅の会社が新たな規格商品を全くの別ブランドで展開した場合、やり方次第ではこれまで築いたブランドイメージ、知名度、自社らしさを活かせませんので、要注意です。また、新商品の商品力も大きく問われます。性能訴求のパッケージもあるようですが、新築市場で単にスペックの追求を軸にしたコストパフォーマンスだけでは(資材高騰もあり)差別化要素として見出しにくく、厳しいでしょう。

 既存の技術を時流に適応するかたちで新市場、ほぼ未開拓の顧客へ広げていくこと手もよくやります。飲食業界では飲食ビジネスのノウハウを活かすかたちで焼き肉業態の展開例が急増しました。新築工務店にとっては、設計力、大工力を活かした持ち家のリノベーションが該当します。持ち家のリノベーションなら新築とリフォームの業際にある市場です。一方、中古+リノベーションや、中古戸建買取再販は新築と不動産の業際です。この違いが大きく、成功ポイント、再現性を高める要素の見極めは慎重に行う必要があります。近隣市場の持ち家リノベーションなら、リスクが小さく、再現性が高いという判断です。また、「建て替えかリノベーションか迷っている」という反響を得て、どちらの事業にもプラスになる点も利点の一つです。また、施工フローはもちろん、どんな人材がフィットするのか、どんな利益構造なのかもイメージしやすいです。

(コンサルタントは虚業と言われようが評論家と言われようが、ご支援先企業の実績しか判断材料がありませんので、この再現性の見極めが大切です)

 「新規市場×新規商品(サービス)」は最もリスクが高いと言われていますが何が正しく何が不正解ということではありません。住宅会社がブランディングの一環で「新規市場×新規商品(サービス)」の飲食事業を展開する例もあります。解決策としてはフランチャイズのパッケージ導入やM&A、業務提携という手もあるでしょう。

さいごに

 以上、成長戦略をフレームワークを用いながら切り分けて私なりの解釈を述べました。時流に適応しているのか、他地域の事例を応用できるのか、市場規模があるのか、競合が少ないか、差別化要素はあるか、自社の強みを活かせるかといった観点で常にアンテナを磨いて、考察していくことが大切です。

 これまでも消費増税、リーマンショック等不況期が一定の周期で起こりました。そして、今回のコロナショック、ウクライナショック、インフレショックと住宅業界は大きな変革期を迎えて、住宅不況論が飛び交っています。そんな中、どうやって存続させるかという生存戦略ではなく、次世代の成長戦略におけるヒントをこれからも発信できればと考えています。

※マトリクスに関しては私なりのアレンジを加えており、あらかじめご了承下さい。

この記事を書いた人

コダリノ