先日、YKKAPさんが主催するトークセッションで「リノベーション市場は活性化するか」という問題提起をさせていただく機会がありました。
YES派は松尾さん(松尾設計室)、石橋さん(鷲見製材)と私。日下さん(Eee works)は「既存住宅の質を考えるとリノベーションが活性化するのは30年後だ」という、インスペクションにも精通する実務者らしい見解でした。
私はYES派ではありますが構造的な問題があり「緩やかに市場が成長する」と回答しました。
・国、事業者、エンドユーザーの課題感
1.国策の問題
補助金と税収の循環、現状は新築とリノベで50:50の施策であり、省エネ改修先進国であるドイツなどに比べてもダイナミックな政策とは言えない
2.事業者側の取り組み
新築志向の事業者が多い点、難解と言われるリノベーションに対応できる技術の継承など課題がある
3.エンドユーザーの住宅観
直近、(中古住宅でなく)新築を選んだ理由の1位は「新築のほうが気持ちいいから」というアンケート結果もあり(国交省調べ)、日本人の新築信仰が劇的に変化することは考えづらく、緩やかにシフトするだろう
・リノベーションの活性化策のイメージ
リノベーションの活性化策(国策)における要素として感じているのは以下の5つです。
1.リノベーションの活性化は構造的にハードルが高いことを再認識し、活性化計画を策定する
2.補助金、中古流通など点だけではなく、全体設計が必要
3.リノベーションの定義、リノベーションらしさ、リノベーションの特徴、リノベーションのメリット、リノベの期待を盛り込んだ計画
4.リノベーションが人を鼓舞し、引きつけるためのミッション、ビジョン、戦略目標の策定
5.リノベーションの正しい認知から始める下位目標、中位目標、上位目標を策定
とは言え、「新築そっくりさん」は事業年商1,057億、年間棟数は8362棟、直近6月だけでも全国370箇所で見学会を開催しています。また、商圏人口17万人という限られた市場で、新築工務店からリノベ専門へ業態転換し、過去4年間で2000万級リノベーションの受注・施工実績が80棟を超えるようなクライアント様が存在するのも事実で、潜在市場を掘り起こしているからこその例です。
・新築からリノベーションへシフトするのか
人口減少に加えて、期せずして、資材高騰の影響でリノベ市場が注目されています。外部環境は様々な要素がありますが、リノベ市場が活性化するかどうかは事業者によるところが大きく、市場の先行きが不透明であるからこそ、主体的に市場を創る取り組みが求められていると強く感じています。「新築が予算的に難しいから賃貸で」ではなく、リノベーションが大きな選択肢、解決策になるよう、私も質の高いインプット、アウトプットに鋭意努めます。