「危機突破読本2022」への寄稿と補足 ~工務店であり、地域のメディア企業でもある意識を~

 先日「危機突破読本2022(キーパーソン33人による危機突破のための緊急提言)/新建ハウジング」に寄稿させていただいました。データ、道筋、提言という構成で読み応えがありました。33人、それぞれの立ち位置からの着眼点、洞察は多元的にとらえるヒントになるのではないでしょうか。

私の内容は常に発信していることですが、少し加筆しますと下記のようになります。

・現在の住宅業界・市場にある「危機」とは何か?

 生産力、消費力、経済力といった全体のパイが縮小する中、現状の延長線上では集客はもちろん、経営も難しくなることは確かだと思います。一方、増税ショック、リーマンショック、コロナ&ウッドショック等外部環境の大きな変化が10~11年スパンで起こる中、進化を促すチャンスにできるかどうか、自戒の念も込めて、真価、進化、深化が問われているととらえています。

・工務店が短期的に(今すぐ)すべきことは何か?

 まずは、既存事業において今後も自社の競争優位が続くのか続かないのか、さらに、需要が増えるものと需要が減るものは何か、小さな兆候を感知し、見極めること。同時に自社が培ってきたDNA、自社ならではの強み、提供価値を冷徹に再認識すること。需要があり、競合が限られ、自社の強みに適合する、この3条件が揃った領域で徹底的にやり切ること(親和性のあるビジネスモデル、人材育成等)。その先に、必ず工務店の活路がある確信しています。

・住宅業界・市場は今後、どうなっていくと考えているか?

 緩やかにリノベーション市場の活性化が進むのでは。国策(新築とリノベの比重や補助金と税収の循環)、事業者の取り組み、エンドユーザーの住宅観(新築信仰)などハードルはありますが、一方で需要創造し、着実にリノベーション実績を蓄積するクライアント事例も増えています。「持ち家リノベ(実家リノベ含む)」に特化するのか、「中古+リノベ」という領域を狙うのか、「性能向上リノベ再販」に取り組むのか。細分化していく中、自社の強みを活かせるのかどうかという視点が益々欠かせないものになるでしょう。

 事業の語源には「時代に応じて、変化させながら、社会を整え、国民、市民を導く」という意味があるそうで、時流適応や顧客創造は事業の本質であると気づかされます。

・工務店が中長期的に備えるべきことは何か?

 不確実な未来だからこそ、より良い社会にしていくという想いで、建物、自社、地域という3つの価値を高めながら主体的に市場を創造していく姿勢が求められているのではないでしょうか。「3つの価値/価格」という観点で、気候、風土、歴史、文化、暮らしといった地域価値も見つめ直し、継続的に発信し続けることも大手にはない、工務店が主導すべき役割であると感じています。理念、哲学に一貫した土壌づくりが熱伝導となり、中長期的な顧客創造につながると考えています。

・まとめとして

 大きな潮流を見ていくと、工務店であり、同時に地域のメディア企業でもある必要性を強く感じます。会社として、社員として、自らが発信者となり、顧客接点が多面的に広がり、認知度が向上し、インサイト情報も蓄積できます。そして、各顧客接点で強みをベースに何を訴求するか一貫性を持たせることは特に重要だと考えています。

 中小企業が情報発信するツールが揃ってきており、「営業主体+販促費用をかける」から、「マーケ人材+手間暇をかける」へと比重がシフトしていると言えます。

この記事を書いた人

コダリノ