新築市場の縮小が確実視されている中、「これからはリノベーションだ」そんな声を耳にする機会が増えてきました。一方で「なかなか一歩を踏み出せずにいる」というケースも多いようです。そこで今回もリノベーション事業に対応できる経営資源も持っているという読者を想定し、新規事業としてのリノベーション事業という切り口で述べていきたいと思います。
・ゼロをイチにするような新規事業ではない
そもそも私が提言するリノベーション事業はゼロベースからの参入ではなく、経営資源がある状態から始動するというものです。自社が既に蓄積している建築リテラシーや本業のブランドイメージといった強みが掛け合わさって、業際ともいうべき隣の市場で活用・展開していくという事業です。
・リノベーションを再定義する
リノベーションで検索しますと、多くのエリアで様々な会社が上位に上がってくるのが現状です。つまり、リノベーションの定義があいまいで、市場も未成熟と言えるでしょう。そうした中で、新規事業として取り組むのなら、社内でリノベーションの共通認識を持つこと、それが自社ビジョンの実現につながっていることが肝要です。そして市場に対して自社が正しいと信じるリノベーションのメッセージを発信し、その領域でポジションをとることをおすすめします。
・リノベーション事業のネガティブイメージ
「リノベーションは大変、新築は楽」という声も多いです。リードタイムが長い、粗利が読みづらいといった印象がつきまといます。ここで心のよりどころになるのが「我々が取り組む領域だ」といった使命感や矜持、「様々な現場があり、やりがいを感じる」といった建築好きのマインド。これらが上回る工務店、スタッフはネガティブイメージを打破できるだけでなく、経験と実績がレバレッジとなり、事業の難しい側面を軽減させると考えています。
・停滞期
とは言え、いとも簡単に事業が立ち上がっていくことはめったにありません。リノベーションサイトを開設するまでの期間、さらに、完成見学会など適切な企画を打てないという壁が立ちはだかり、そうした集客課題の解決策の一つとして、リノベーションモデルハウスを開設するまでの期間。事業化の全体像が構築されていく過程でこうした停滞期はつきもので、地道に一つひとつ取り組んでいく中長期の視点が望まれます。
・会社の本気さをトップ自らの行動で示す
ある会社に、リノベーション事業立ち上げのオープン販促でドアコール(1,000軒)を提案したところ、会長、社長が社員と共にドアコールを実践されたことが強く印象に残っています。これは一例ではありますが「これからはストックビジネスに注力していく」と単に語るよりも、経営トップの行動で本気さが社内に醸成されたことは想像に難くありません。会社の規模にもよるでしょうが、本格参入し、軌道に乗るまでは経営トップの陣頭指揮を期待します。
以上、1歩踏み出す会社が増えることで、市場が活性化するという思いでこれからもインプット・アウトプットに努めて参ります。