・中小規模のM&Aの増加
業界紙の注目記事として度々取り上げられたM&A。私のもとにも「リノベーション事業10億に向けて、エリア拡大したい。そのためにはM&Aが大きな選択肢の一つだ」という高い事業意欲を持つ経営者からの相談がある一方で「後継者が育っていない。売却を模索している」という、どちらかというと何らかの経営課題があり、自分自身の事業意欲もやや下がってきている経営者からの相談、両方があります。
「中小企業M&Aの真実(東洋経済新聞社)」によると、M&Aによるシナジーには「売上シナジー」「コストシナジー」「リスク分散効果」「財務力強化」「経営手法の導入・社員の意識改革」「負のシナジー」計6つのシナジーがあると記されていますが、リノベーション会社の買収においては譲受側にとって(リノベに対応できる)建築リテラシーに対する魅力、譲渡側にとっては働き方の改善によるスタッフのモチベーションアップという相互メリットを見込むケースが増えそうです。
2012年から2022年、日本M&Aセンターにおける建設業界でのM&A成約件数は約10倍に増加、譲渡企業の半数以上が5億円未満となっています(「建設M&A/日経BP」より)。大きな転換点を迎えている建設業界では今後も中小規模のM&Aがさらに増えそうですが、双方の発展のため、従業員にとっての最適解としてのM&Aが増えることを期待します。
・住友不動産の事業統合
11月に住友不動産の新築部門と新築そっくりさん部門が事業統合するという発表がありました(2025年4月から統合)。
大きな方針として「主力の新築住宅分野に加え、今後拡大が期待される既存住宅マーケットでの事業成長に挑戦するため、リフォーム事業と新築住宅事業の事業統合を行い、ノウハウの共通化や生産性向上を図り、ストック時代ならではのアプローチを開拓する」という発表です(ニュースリリース)。あくまでも私の推察ですが、4号特例縮小を控え、建て替えとリノベーション事業を融合させることで、会社として利益の逸失を防ぎたいという思惑もあるのではと見ています。
リノベーション市場でトップシェアを誇る新築そっくりさんの新築事業統合は私にとって、時代を感じさせる大きなニュースです。「ストック時代ならでは」とありますが、人口ボリュームからも時流適応と言える動きです。来年4月の法改正はリノベーションにおいて当初混乱することが懸念されていますが、中長期的に建て替えとリノベーションが工務店にとって活路を見出すという点でも、地域課題解決という点でも大きなテーマになるのではと予測します。