現場で使える競争戦略(ポーターの競争戦略VSバーニーの企業戦略論)

 日々、私が重視している大きなことの一つに「事例研究×競争戦略」という姿勢があります。特定企業の定点観測を継続させながら、単なる事例の横展開ではなく、常に古典でもある戦略論に照らしあわせるという取り組みです。言い換えると現場主義(ビジネス)と学術論文(アカデミック)という2つの視点です。

 中でも判断軸にしている古典がポーター氏の競争戦略とバーニー氏の企業戦略論です。ポーター氏は競争戦略論の大家として、バーニー氏は世界最高の経営思想家としてアメリカトップ500社のCEOにとって経営のバイブルとして受け継がれていると言われています。

 まずポーター氏は5フォースという、目先の競争から一歩抜けだし、業界構造を大局的に見る理論を提唱しました。競争に勝ち残るためには、競争が緩やかで魅力的な業界(市場)を選び、自社に優位な地位を築くこと。業界に働く圧力として。新規参入、代替品、仕入れ先、買い手(顧客)、同業他社という5つの力があり、5つの観点でその業界が魅力的かどうか、収益構造を構築できるかどうか判断するというのが5フォースです。

 また、競争が激しい業界では次の3つが有効であると述べました。

1.コストリーダーシップ戦略

価格を下げる体制をつくることで、一気にシェアを獲得すること(単にディスカウントすることではない)

2.差別化戦略

差別化して、特異だとみられる何かを創造すること

3.集中戦略

特定の顧客層、価格帯、製品の種類、市場等へ資源を集中すること

ポーターの競争戦略は1980年代の学術文献なので時代が違う、変化が激しい現代にそぐわないという声もあるかもしれませんが、近年のハーバードビジネスレビューでも有効性を認める記事が載っており、いつの時代においても極めて重要な原理原則だと考えています。

 一方、バーニー氏は、内部要因の競争力に目を向けて、企業が競争優位性を保てるかどうかは、保有する経営資源とそれを活用できる能力にかかっていると提言しました。資源があるかどうかだけでなく、その活用能力があるかどうかにも意識を向けていることがポイントです。

1.経済価値(Value)

会社が持つ経営資源はその会社を取りまく外部環境における機会や脅威に適応することができるかどうか

2.希少性(Rarity)

その経営資源、技術を保有していたり、活用したりしている会社は少ないかどうか

3.模倣困難性(inimitability)

保有していない企業が獲得、強化する際に、コスト上で不利になるかどうか(模倣が難しいかどうか)

4.組織(Organization)

その資源を有効に活用する方向性や仕組みが整っているか

 以上の4つの条件がそろえば、持続的な競争優位性を保つことができると言い切りました。

 模倣困難性は参入障壁の高さでもあり、多くの企業が参入したがらない領域とも言えるでしょう。イコール、地域において希少性となる点、戸建リノベーション事業を研究する過程で大きな示唆を受けました。

 日本人は模倣と改善に偏りがちと言われますが、ポーター氏とバーニー氏を複眼的に見ることで、外部環境と内部環境、両方を洞察しながら戦略を考えることが可能になります。わかりにくい論文だと切り捨てるのはあまりにもったいなく、さらに細分化されるであろう戸建リノベーション事業の領域の中で俯瞰的に判断するフレームワークとして、第一線で戦う経営者、ビジネスパーソンこそ、必要なものだとつくづく感じています。

この記事を書いた人

コダリノ