最近、業界紙からの取材依頼が続きました。加盟店を持つ大手メーカーさんからの問い合わせも来ています。やはり、それだけ、工務店さんにとって第2の柱として、戸建リノベーション事業への意識が高まっているということでしょう。
今回、まず取り上げるのは、市場の浸透に応じて顧客層が移り変わっていくという「イノベーター理論」についてです。どの顧客層を対象にするかという視点で、訴求ポイントのヒントを得ることができます。
<ライフサイクル別の訴求ポイント>
・導入期は「革新者(イノベーター)=全体のうち2.5%存在」に対して、スペックの訴求が有効
・成長期には「初期採用者(アーリーアダプター)=13.5%」を対象にベネフィットの訴求が有効
・成長期後期は「前期追随者(アーリーマジョリティ)=34%」を対象にコストパフォーマンスの訴求
・成熟期には「後期追随者(レイトマジョリティ)=34%」を対象に同一エリアの施工事例やお客様の声(満足度)の訴求
訴求ポイントは一例ですが、リノベーション業界ではスペックからベネフィットへの移行期という見方もできます。
このように顧客像によって反応するポイントが違うことを前提に、訴求ポイントを考えていくことは一つの判断基準だと考えています。「お客様にとって、スペックではわかりにくい」「スペックは男性目線ではないか」という声もありますが、どの顧客層をコアターゲットに設定するかで判断は分かれます。ここではリフォーム市場のライフサイクルより、商圏内のリノベーションのライフサイクルというとらえ方が前提となります。ただし、リノベーションは大衆向けでも耐久消費財のカテゴリーでもありませんので、あくまでも理論の応用であり、検証しながら訴求ポイントをチューニングしていくと良いでしょう。
<リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー>
訴求ポイントに関連して、今回取り上げるもう1つの視点は、市場のポジショニングでの4分類です。自社のポジショニングにふさわしい施策を決めて、やり切る、もしくは新築で蓄積した差別化要素をリノベーションでも徹底して訴求することが有効です。
業界(商圏内)1位のリーダーはシェアと資金力を活かして市場で優位を保ちます。それに対して、2位のチャレンジャーは、差別化し特定の顧客・ニーズを狙います。チャレンジャーには多少コストが高くても品質や魅力で勝負することが基本です。チャレンジャーというポジションであれば、業界1位の模倣でない点がポイントです。商圏内で新しい顧客接点をつくり、市場を開拓していく姿勢が必要です。
リノベーション業界の場合は規模の経済が働きにくいですが、リーダーは圧倒的なブランド力をもとに、リノベーションより低い価格帯や戸建からマンションへと全方位で展開します。それに対して、2000万円級リノベーションの土俵へ絞り、この領域で価格訴求ではなく、高付加価値戦略をとることで独自ポジションを築く事例が各エリアで増えています。