戸建・性能向上リノベーション事業 販促の考え方(その1)

まずは「誰に」「何を」「どのように」を決める

 まず前提として、新築工務店なら「新築事業で培ってきた建築リテラシー、自社ならではの強みを活かしながら、そのまま近隣市場のリノベーションにズラすというシンプルなかたち」が、成功確率が高いパターンです。リノベーションに限らずですが、市場規模があり、競合が少なく、自社の強みに適合しているという条件が重なっているなら、案件も最大化しやすく、軌道に乗る可能性は極めて高くなります。

 リノベーション事業の販促において、誰にどのような提供価値を提供するのか、ここが定まっていることが出発点です。「誰に」「何を」が定まってくれば、「どのように」の媒体も、掲載する写真やフレーズも絞られていきます。

 構造がからむようなスケルトンのリノベーションは参入障壁が高いですが、地域において独自ポジションを築くことができれば、持続的に優位性が続きます。私の感覚値ですが30万人の商圏を確保できそうなエリアは約300エリアあり、そのうちの約8割は空白マーケットに近い状態であると感じています。

・チラシ、WEBの比率は?広告宣伝費の目安は?

 チラシなのかWEBなのかというご質問をよくいただきます。事例ベースで述べると、100万人を超えるような大商圏ではWEBだけで成立している例が多数存在します。さらに、デザイン系なのか、性能向上系なのか、どちらかに振り切って事業化している例が多いのも大商圏での特性です。一方、地方エリア、特に20万人、30万人という商圏では、チラシとWEBの相乗効果という考え方が現時点での基本形でいかに最適配分するかがカギになってくると考えています。WEBが機能すれば、売上対広告宣伝費率は1%前後に収まることもあります。一方、紙媒体が必要なエリアでは1.5~2%の広告宣伝費の確保が必要です。

・集客力の背景

 まず、前述した提供価値が新築とリノベーションで一貫していて、母体となる会社の地域ブランディングが一定のレベルにあればさらに2000万円級のような高単価なリノベーション事業には好条件です。その上で、自社にとってストライクゾーンの案件をいかに獲得できるか、対応する営業担当者がスムーズに商談できる案件なのかどうかが集客のポイントです。それがマーケティングの本質であるはずです。

 近年、注目されているリノベーションのモデルハウスも全体設計の中での1つの点に過ぎません。もちろん、チラシも同様に1つの点です。

 コアターゲットの設定から始まる全体設計がともなった上で、リアル、オンライン含め、すべての顧客接点を情緒的な価値、機能的な価値といったバランスも考えながら、アウトプットを最適化していくこと。興味のある顧客にテキストや写真、動画をダイレクトに届ける、問題解決につながるメルマガ、SNSで発信し続けることがカギです。

 近年のマーケティング環境は多額の広告宣伝費を投下できる会社が有利とは言えなくなりつつあります。リノベーション市場がどのような変化をたどるか見極めることはもちろん大切ですが、同時に、工務店YouTuberの方々がエンドユーザーへ大きな影響を与えたように、正しいと信じるリノベーションを一貫して地域に向けて発信し、自社の商圏で市場を切り拓いていく、そんな姿勢で取り組んでいただきたいと考えています。

※写真は、YKKAPさんの戸建性能向上リノベーション実証プロジェクトの現場にて

この記事を書いた人

コダリノ